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遙かなるセントラルパーク(小説)

遥かなるセントラルパーク 上 (文春文庫)
トム マクナブ
文藝春秋 (2014-12-04)
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遥かなるセントラルパーク 下 (文春文庫)
トム マクナブ
文藝春秋 (2014-12-04)
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作品名:遙かなるセントラルパーク
発表:1982年・英
著者:トム・マクナブ
あらすじ:
ロサンジェルスからニューヨークまで5000キロ。
アメリカ大陸横断ウルトラマラソンがはじまる。
イギリス貴族、人生の逆転を狙う労働者、貧しい村のために走るメキシコ人、
ガッツを秘めた美しき踊り子……2000人のランナーが、
誇りをかけてセントラルパークめざして走りはじめる!
圧倒的な感動と興奮の徹夜本、堂々の開幕。
(以上、文庫の背表紙より)

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本作はあらすじにある通りマラソン小説である。
つまり本編の大半が走っている描写や、レースの掛け引きの描写
――だと思ったら大きな間違いである。
本作は登場人物の過去、このレースに参加するまでの経緯のほか、
レース以外での選手らの交流などにページの半分以上を割かれている。
それにより、彼らの走る目的、説得力を強くしている。
群像劇作品のセオリーである人物視点の切り替えも頻繁であり、
レース中はそれぞれの順位で、それぞれの状況・心境を描写することで、
それぞれの人物に感情移入しやすくなっている。
さらに読者自身が日頃ランニングしているならば、
その心理描写、肉体描写は頭だけでなく身体でも理解できるため、
面白さはさらに倍増するだろう。
複数のランナー視点で描かれる本作。あらすじの書き方からも分かるように、
明確な一人の主人公が定められているわけではない。
未読の人はもしかしたら『最終的に一番になった人物だろう』と
思われるかもしれないが、そんな単純ではない。
いわゆるスポーツものの作品であるため、
物語の最終目標は『勝つか負けるか』と判りやすい。しかしそんなに単純ではない。
本作に『主人公たち』は存在するが、『主人公』はいない。

いや、いた。
明言すれば一人だけ、『主人公』足りえる人物は存在していた。
それは原題にもなっているチャールズ・フラナガンその人だろう。
(原題:FLANAGAN'S RUN)
彼はマラソン出場者ではない。本作のアメリカ横断マラソンを企画し、
運営する興行主だ。そう聞くと、マラソンランナーたちとは関係のない
立ち位置ではないのか、と疑問を募らせるだろう。その通りである。
彼はレースに参加しない。しかしレースを無事成功させるためレースの外側で、
直面する困難に次々と立ち向かう。おそらくフラナガンを描く描写が
本作の3分の1を占めているのではないだろうか、ちゃんと数えていないが。
とにかくも本作・遙かなるセントラルパークは、
その帯に載っている煽り文句通りに『徹夜するほど面白い』と言っても
過言ではないだろう。
しかしこれから読む方が注意して欲しいところは、
本作にストイックなスポーツ小説を期待しないことである。
そうしてしまうと、いささか肩透かしを食らうかもしれない。
本作は純粋なマラソン小説ではなく、1980年台に書かれた、現代でも十分通用する、
純粋なエンターテイメント小説である。

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<関連お勧め作>

あらすじを読んでピンと来た方もいるかも知れない。
現在も続く大作・ジョジョの奇妙な冒険の、第七部として連絡されていた
この作品は、サンディエゴからニューヨークまで馬で走る作品。
途中にチェックポイントがあったりと、明らかに本作をモチーフにしている。
両方読んで、それぞれのエンターテイメント性の違いを楽しんで欲しい。

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by 3G_gi_gei_go | 2015-07-08 03:10 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

様々なジャンルの群像劇作品を紹介します。更新完了。


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