群像劇パーティ!

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カテゴリ:作品紹介(小説)( 25 )

ひかりごけ(小説)

ひかりごけ (新潮文庫)
武田 泰淳
新潮社
売り上げランキング: 32,812

作品名:ひかりごけ
著者:武田泰淳
発行:1954年(昭和29年)
あらすじ:
雪と氷に閉ざされた北海の洞窟の中で、生死の境に追い詰められた人
間同士が相食むにいたる惨劇を通して、極限状況における人間心理を
真正面から直視した問題作『ひかりごけ』。


本作の構成は独特極まりないものである。

前半は天然記念物の『ひかりごけ』を取材しにきた「私」に、
地元の中学校長がペキン岬の惨劇の話を『おかしくてたまらぬ風に』話す。
そしてこの惨劇を年若きS君が『小説的に』書いた郷土史の一項が記される。

後半は脚本風となる。括弧内のト書きと、人物名とセリフが最終ページまで
続くのである。内容は上記の惨劇の始終と、その後の裁判風景だ。
そして本作が最も、群像の輝き増したるは後半の脚本風小説場面である。

食人の罪で裁かれた唯一の生き残りである船長と、死んだ船員・八蔵と五助、
そして最後まで生きて生死の極限を見た少年・西川。彼ら四人がくりひろげる
遭難小屋での状況描写。そしてその後の裁判での、被告人・船長の描写。

脚本は映像的表現のための材料であるが、本作はあくまでも小説。
小説として、本作を核心部分を表現するため、後半の脚本風描写が功を奏している。

脚本は基本的にほとんどをセリフで表現される。ト書きで動きを示すが、
これらを十二分に表現発揮するのは役者の領分だ(と思っています)。

本作は脚本表現をもちいることで人物から、行為を分離させることに成功している。
船長の犯した食人の罪は、船長のキャラクターやバックボーンとはなんの関係もない。
これは舞台上で表現されたことだけが全てである演劇の、脚本表現によって見事に
表されている。

断罪されうる憎むべき行為が、しかし船長という登場人物に紐付かれずに、
ただそこにあっただけであり、それを私が読んだだけである、という心地よい
距離感のある読み方ができた。
キャラクターに肩入れしないで物語に没入することができるという、
満足する読後感を味わうことが出来た。

それだけで素晴らしい。


<関連作>
野火 (新潮文庫)
野火 (新潮文庫)
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大岡 昇平
新潮社
売り上げランキング: 9,022





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by 3G_gi_gei_go | 2017-02-15 00:00 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

悦ちゃん(小説)

悦ちゃん (ちくま文庫)
獅子 文六
筑摩書房
売り上げランキング: 26,062

作品名:悦ちゃん
著者:獅子文六
発行:1937年(昭和12年)
あらすじ:
悦ちゃんはお転婆でおませな10歳の女の子。ちょっぴり口が悪いのはご愛嬌、
歌がとても上手で、周りのみんなも目が離せない存在。早くに母親を亡くして、
のんびり屋の父親と二人で暮らしているが、そこへ突如、再婚話が持ち上がったから、
さあ大変。持ち前の行動力で東京中を奔走、周囲を巻き込みながら最後は驚きの事件が!
ユーモアと愛情に満ちた初期代表作。
(文庫・背表紙より)

昭和の流行作家・獅子文六の初の新聞小説。
昭和11年7月~昭和12年1月に報知新聞上で連載された。

悦ちゃんを中心にした大人たちの思惑が絡まり合い、
ストーリーはまったく予想にしない方向に進む。
次は一体どうなるのか気になり、ページをめくる手が止まらない。
特に後半の畳み込みはすさまじい。

少々トリッキーな展開もなくはないが、それもまた新聞小説の一興であろう。
リアルタイムに新聞で読んでいた人々は続きが気になって仕方がなかったに
違いない。テレビのない時代、新聞が娯楽も担っていた時代。
それほどに新聞小説は強いパワーを持ったコンテンツだったのだろう。

作中に描かれる戦前の東京。WW2手前の時代であるが、情景は鮮やかさと
エネルギーに満ちている。円タク、銀ブラ、昔ながらの江戸っ子などの
ノスタルジーな風俗はモチ出て来るが、ほかにも、セーラー服を着て
女学生コスプレをする20代前半のシャンな女性や、子役アイドルとして
歌手デビューする小学生など、昨今のサブカル界隈でよく見る展開が
約80年前にもすでに繰り広げられるのが面白い。
昔から変わっていないというか、昔からこういうのがお好きということだろうか。


<関連作>
娘と私 (ちくま文庫)
娘と私 (ちくま文庫)
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獅子 文六
筑摩書房
売り上げランキング: 262,401

連続テレビ小説第1作の原作。



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by 3G_gi_gei_go | 2017-02-08 00:00 | 作品紹介(小説) | Comments(0)
ぼくたちの好きな戦争 (新潮文庫)
小林 信彦
新潮社
売り上げランキング: 288,730

作品名:僕たちの好きな戦争
著者:小林信彦
発行:1986年(昭和61年)
あらすじ:
たのしい戦争、ゆかいな戦争、一度やったらやめられない―。
束の間の大勝利に酔い、大戦のノリを満喫する東京・下町の和菓子屋一家。
辞世の歌でギャグ合戦を展開する南の島の兵士たち。そしてアメリカ海軍の
少尉の手になる抱腹絶倒の近未来小説。めまぐるしく舞台を移しながら、
戦争は際限なく喜劇として描かれてゆく。あらゆる手法を駆使し、
笑いと仕掛けで構築したポップ戦争巨編。

(背表紙より)

私は小林信彦が大好きである。好きすぎて読み渋りするほどである。
というわけで本棚には〈わざと〉積読している氏の作品があと数冊ある。
そのなかで群像劇な作品は都度都度紹介する予定だ。

そんなわけで本作・僕たちの好きな戦争。
なんというか氏の文体をもってしても舞台の時間と、人物の視点が
目まぐるしく飛び回り、さらにはかなりのページを割いた作中作がぶちこまた結果、
全編を通した煩雑さをかもし、いささか混乱しながら読んだ。

しかしこの混乱こそ、戦時中の銃後の人々の暮らしそのものだったのだろうか。
空襲で家は焼かれ、家族や近所の人々はいなくなり、明日が今日の延長線上に
乗っていない日常を過ごす人々の心理状態。それこそ本作の全体に流れている。

なにかのエッセイで作者が、本作は難産だった旨を記していた。
それもまた心地よい混乱を来す読後感をかもす要因かもしれない。

(余談だが本作2冊買ってた)

<関連作>
2001年映画の旅―ぼくが選んだ20世紀洋画・邦画ベスト200
小林 信彦
文藝春秋
売り上げランキング: 832,108





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by 3G_gi_gei_go | 2017-01-25 00:26 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

感情8号線(小説)

感情8号線 (祥伝社文庫)
畑野 智美
祥伝社 (2017-01-12)
売り上げランキング: 180,870

作品名:感情8号線
著者:畑野智美
発行:2015年(平成27年)
あらすじ:
荻窪で暮らす劇団員の真希はバイト仲間に片思い中。彼には彼女がいるのに
思いを断ち切れない。八幡山で同棲中の絵梨は彼に暴力を振るわれているが、
今の生活を手放せない。二子玉川の高級マンションに住む専業主婦の芙美は
夫の不倫に苦しんでいる。同じ道沿いに暮らしているのに、恋愛も悩みも
人生もみんな違っていて……。幸せへ遠回りしてしまう女性たちの六つの物語。
(文庫・背表紙より)

2017年1月からの連続ドラマ化に合わせて文庫化したものを読了。

上記あらすじで説明完了しているが、一本の幹線道路をマクガフィンとして
6人の女性視点を各1話とした全6話の短編集。しかし登場人物はすべての話で
つながりをもっており、短編集というよりは章分けの長編と言った印象。

環状八号線の沿線のそれぞれの街。道一本でつながっているにも関わらず、
メインの移動手段である、電車で考えてしまうと実は遠い。
『近いのに遠い』それぞれの街。『まっすぐ行けずに遠回りしてしまう』それぞれの街。
本作ではその描写をそれぞれの話でくりかえし表現している。
それは地理的なものだけでない暗喩のようにも読めてくる。

性格の違う女性6人+脇役数名を、細かな所作表現・描写で
書き分ける筆致は見事。実際の地名や、人物の過去・背景もしっかりと
書かれているため、登場人物はどれも説得力を持って毎日を生きていると感じる。

いわゆるオーソドックスな群像劇。


<関連作>
運転、見合わせ中
運転、見合わせ中
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畑野 智美
実業之日本社
売り上げランキング: 386,529


海の見える街 (講談社文庫)
畑野 智美
講談社 (2015-09-15)
売り上げランキング: 63,122




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by 3G_gi_gei_go | 2017-01-18 00:00 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

カルテット!(小説)

カルテット! (河出文庫)
河出書房新社 (2016-07-01)
売り上げランキング: 181,084

作品名:カルテット!
著者:鬼塚 忠
発行:2010年(平成22年)
あらすじ:
「そこにぼくの音楽があるんです!」
バイオリニストとして将来を有望視されている中学生の開。
ところが家族はバラバラで崩壊寸前だった。ある時、家族で
カルテットを組んで観客を前に披露することに——。
家族の絆、音楽、そして淡い初恋……。心温まる涙と感動の
青春&家族物語。


名前の通り、四重奏(カルテット)を演奏する4人の群像劇。
普通のカルテットとちょっと違うのは、その4人が家族であること。

一姫二太郎の4人家族がカルテットを通して、お互いの気持ちを知り、
想いを発見し、絆を深めていく王道的物語。
主人公は二太郎の開だが、失業の父や、やさぐれ中の長姉、そして
母親と、随所に視点を切り替えて、各人のバックボーンを描くことで
話に深みを増している。

「心温まる」のうたい文句の通り、最後は王道的感動が待っている。
(その後の物語がちょっと心配な気もするが・・・)


<関連作>
カルテット!~Quartet!~ [DVD]
松竹 (2012-06-08)
売り上げランキング: 93,312

映画化もしたようですね。
「カルテット」って映画は複数ありますが、
剛力彩芽=今回の
袴田吉彦=久石譲監督
ってことで。




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by 3G_gi_gei_go | 2016-08-31 00:21 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

極東セレナーデ(小説)

極東セレナーデ (小林信彦コレクション)
小林 信彦
フリースタイル
売り上げランキング: 321,012

作品名:極東セレナーデ
著者:小林信彦
発行:1987年(昭和62年)
あらすじ:
フツーの女の子が、いつの間にか<知的アイドル>になった。
CM、映画、LPと、もう大騒ぎ!! ところが、写真雑誌や、
怖い人たちが、このアイドルに目をつけて……。


80年代アイドルのサクセスストーリーと言ったところ。
物語のはじめはアイドルとして作られるフリーライター志望の
朝倉利奈(20)の視点だったのが、後半は完全に、それを
仕掛けたプロデューサーの氷川(45)視点に変わる。

本作の主人公はリナだが、彼女に関係する芸能関係者の面々の
それぞれの立場・心情をことこまかに説明する。
それは群像劇というより単純に、小林氏の書きたい筋のために
視点を飛ばしているだけのように感じる。視点のブレは喜ばしい
ものではないが、本作はもともと新聞小説である。新聞読者を
飽きさせないよう、毎日読んでもらうには、視点のブレとかは
細かいことなのだろう。きっとそうだろう。だって面白いから。

筆者の持ち味であるキャラクタたちの会話の応酬、時代分析、
そして都会(東京や神戸、そしてニューヨーク)の風景描写も、
リアルタイムで読んでいた読者を飽きさせないためには具合が良い。

上で紹介した新装版以外にも上下巻で文庫版なども出ている。


<関連作>

世間知らず
世間知らず
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小林 信彦
新潮社
売り上げランキング: 1,283,305

「背中あわせのハートブレイク」という名前でも出ている
小林信彦作品のなかでもお気に入りのひとつ。
いわゆる「学園もの」だが、舞台が終戦から2~3年の東京。
しかし全然暗くない。むしろユーモアたっぷりで、どんどん
読み進めることができる。




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by 3G_gi_gei_go | 2016-08-17 00:48 | 作品紹介(小説) | Comments(0)
ロッキン・ホース・バレリーナ (角川文庫)
大槻 ケンヂ
角川書店
売り上げランキング: 39,957

作品名:ロッキン・ホース・バレリーナ
著者:大槻ケンジ
発行:2007年(平成19年)
あらすじ:
十八歳で夏でバカだった!
バイト暮らしの耕助は、仲間のザジ、バンとパンクバンド「野原」を組み、
生まれて初めてのライブツアーへ出かけた。行く先々でグルーピーを
引っかける予定が、謎のゴスロリ娘のヒッチハイクで旅は思わぬ方向へ。
彼女、七曲町子の正体は? ツアーファイナルは成功するのか? 
耕助と町子の恋の行方は? 爆笑と感動、大槻ケンヂの青春ロック長編小説。
忘れることなんて絶対にできない最高に熱かったあの季節。



久しぶりの一気読み本だった。
スリーピース少年バンドと、38歳❝負け犬❝マネージャ、そしてワケありの
女の子を載せたハイエースが、東京から博多までライブをしながら走る
青春小説。なんせ「18歳」と「夏」と「バカ」なのだ。青春の典型を思い
浮かばずに入られないし、実際、内容は夏の青春がつめ込まれていた。

本作の主人公はおそらくバンドボーカルの耕助であり、謎の少女「町子」で
あるだろうが(あとがきにもある通り)夢を諦めたおっさん達へ向けて、
「得山」というキャラクタも、主人公級の立ち回りを見せる。
3人の過去や境遇を回想しながら、西へむかう旅路で心の変化・成長していく。
バックボーンには暗いものが流れているが、舞台である夏の風景が、そんな
重苦しさをふきとばせてくれる。

いわゆるロードムービ的な群像劇。
ダージリン急行もそうだったように、この手のパターンとして、

【目的地A】→【道中(車内〉】→【目的地B】→【道中(車内)】・・・

が繰り返されて話が進む。「目的地」では個々が自由に行動できるため、
身体行動を伴う、対外向きのアクティブな「動」が展開される。
結果、人物の性格が見えてくる。人物の過去などにつながる「きっかけ」も
提示される。
その後「道中」では皆が一箇所に固まるため、おのずと仲間内だけの
展開となる。会話行動などでの仲間内の「静」が展開され、動で現れた
「きっかけ」を使って、さらなる謎や、新たな答えが発見される。
人物の関係性はさらに深みをまし、読者は親近感を強くする。
この繰り返しにより、読者も登場人物と一緒に旅路をしているような感覚を
得るのかもしれない。

筆者の経験が多分に反映されており、筆者自身も大好きな作品と評する本作。
すっかり夏本番。帰省の車や電車内で読みふけってはいかか。


<関連作>
グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)
大槻 ケンヂ
角川書店
売り上げランキング: 59,675

「筋肉少女帯」で有名な筆者だが、その才能は小説も発揮されまくり。
青春系が多いので、この夏暇なら作者読みしてみては。



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by 3G_gi_gei_go | 2016-08-03 00:18 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

七時間半(小説)

七時間半 (ちくま文庫)
獅子 文六
筑摩書房
売り上げランキング: 71,166

作品名:七時間半
著者:獅子文六
発行:1960年(昭和35年)
あらすじ:
東京‐大阪間が七時間半かかっていた頃、特急列車「ちどり」を舞台にしたドタバタ劇。
給仕係の藤倉サヨ子と食堂車コックの矢板喜一の恋のゆくえ、それに横槍を入れる
美人乗務員、今出川有女子と彼女を射止めようと奔走する大阪商人、岸和田社長や
大学院生の甲賀恭男とその母親。さらには総理大臣を乗せたこの列車に爆弾が仕掛け
られているという噂まで駆け巡る!
(以上、裏表紙より)

=============
文庫版の解説でもある通り本作は、列車を舞台にした「グランドホテル形式」の作品だ。
あらすじに出てくる人々が、主に恋慕のあれこれで狭い列車のなかを奔走する群像劇。

本作は1960年という舞台背景が色濃く出た作品で、今ではすっかり見なくなって
しまった「大衆小説」である。いわゆる純文学・私小説と呼ばれるジャンルとは区別する
作品であり、現代では「エンタメ小説」と呼ばれているが、大衆小説にはエンタメ小説には
ない『流行性』がある。いわゆる当時の流行りモノが固有名詞として出ているのだ。これは
今の小説では憚れる。最近だと「何者(朝井リョウ・著)」でTwitterとかLINEとかが登場
してはいるが。

本作の最大の魅力。それは文体から漂ってくるキュートさである。キュートだからこそ、
今読んでもモダンで、かび臭くならない。当時の流行り描写が多々あったとしても、
キュートさが、その古めかしさをも味にしてしまっているのであった。

それこそが獅子文六の魅力。
60年代のはじめに書かれたオシャレでキュートな群像劇小説の魅力である。

=============
<関連作>
コーヒーと恋愛 (ちくま文庫)
獅子 文六
筑摩書房
売り上げランキング: 15,079

獅子文六の代表作。これほどまでにキュートでモダンなタイトルがあっただろうか。
それはサニーデイサービスの楽曲タイトルになり、さらにジャケットを飾るほどに
秀逸な、おしゃれ題名だ。内容ももちろんキュート。


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by 3G_gi_gei_go | 2016-02-25 00:37 | 作品紹介(小説) | Comments(0)
予告された殺人の記録 (新潮文庫)
G. ガルシア=マルケス
新潮社
売り上げランキング: 10,006

作品名:予告された殺人の記録
著者:G・ガルシア=マルケス
訳:野谷文昭
発行:1983年(昭和58年)
あらすじ:
町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、
なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?
閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた、幻想とも見紛う殺人事件。
凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、
崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く
入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。


=============
ノーベル文学賞受賞者の群像劇。港のある小さな田舎町で起こった
惨忍な殺人事件について、被害者の友人でもあった「わたし」が
町人たちに話を聞きながら、事件の真相を知ろうとする。

説明も少なく(もしくは後回しで)登場するたくさんの人物たちは、
誰も彼も、自分たちの立場・職業・身分をキッチリとこなしながら
当たり前の『ケ』の日々を過ごしている。そんな日々に稀に訪れた
素晴らしい『ハレ』の日によって、今回の事件が誘発された。

日常の隙間に入り込む非日常は、喜びか悲しみもしくはその両方を
引き起こす。それは非日常が入り込むまで分からない。

本作はミステリーではない。犯人は冒頭に説明されるし、犯行動機も
ストーリー中盤でしっかりとなされる。本作はこの事件前と事件後の、
人々の営みの変化、人間関係の変化を楽しむ作品であると感じた。

ラテンアメリカ文学独特の文体は、読む人の好みがはっきりと分かれるだろう。

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<関連作>
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)
ガブリエル ガルシア=マルケス
新潮社
売り上げランキング: 3,454

著者の代表作。
焼酎ではない。

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by 3G_gi_gei_go | 2016-02-17 01:28 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)
木下 半太
幻冬舎
売り上げランキング: 275,673

作品名:悪夢のエレベータ
著者:木下半太
発行:2009年(平成21年)
あらすじ:
後頭部の強烈な痛みで目を覚ますと、緊急停止したエレ
ベータに、ヤクザ、オカマ、自殺願望の女と閉じ込めら
れていた。浮気相手の部屋から出てきたばかりなのに
大ピンチ!? しかも、三人には犯罪歴があることまで
発覚。精神的に追いつめられた密室で、ついに事件が
起こる。意外な黒幕は誰た? 笑いと恐怖に満ちた傑
作コメディサスペンス。

=============
目を覚ますとそこは停止したエレベータのなかだった。
乗り合わせた4人は脱出しようといろいろ試みるが……

という感じのサスペンス。『悪夢の……』とあるが、
ホラー・スリラー要素は無い〈もしくは薄い)。4人
それぞれの視点で、章立てて描かれており、最後には
事の結末が全て明らかになる、という安定のワクワク
エンタメ小説だ。

キャラクター性の強い登場人物たちはよく動く。そして
よく喋る。作者は劇団を率いているようなので、脚本的
な描き方になるのだろうか。舞台をイメージして読むと、
なるほどしっくり来る。

全体文量は比較的短いため、さくっと読めて楽しめる作品だ。

=============
<関連作>
D町怪奇物語 (幻冬舎文庫)
木下 半太
幻冬舎 (2015-10-08)
売り上げランキング: 70,472

作者の最新刊。

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by 3G_gi_gei_go | 2016-01-27 00:41 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

様々なジャンルの群像劇作品を紹介します。更新完了。


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