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群像劇パーティ!

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夜警(絵画)


作品名:夜警
作家:レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン
発行:1642年・オランダ


集団肖像画というジャンルの画がある。
市井の人々が比較的有名な画家に肖像画を描いてもらうことは、
難しかった。それは金銭的な問題によるところがほとんど。
宮廷画家に依頼するともなれば、それこそ宮廷に住まう人々が
払うような額で依頼しないといけない。そもそも宮廷画家は
庶民ひとりの肖像画などそうやすやすとは受けぬだろう。
そこで人々は考えた。一枚のキャンパスに一人を書くのでなく、
一枚に複数人を描いてもらうのだ。お代は描いてもらう人々が
皆で出し合うことで、一枚に一人描くよりも安くで依頼できる。

そうして集団肖像画はその時代に大流行した。主に組合単位で、
同額で集金したお金を支払い、大きめのカンバスに皆の肖像を
描いてもらう。
もちろん一人用の肖像画のように正面をきちんと向き、
皆平等に支払った分の通り、皆平等のサイズで描いてもらう・・・

・・・のが、集団肖像画のルールだった。
しかし本作『夜警』は違った。大きく違った。
人々の大きさはバラバラで、しかも向いている方向もバラバラだ。
しかしそれでこそ、この画はピタリと収まった統一的構図を醸している。
一枚の画として大完成に至っている。
それまでの集団肖像画のルールからは、明らかな逸脱だったにも関わらず。
皆平等に支払ったにも関わらず。
(実際は、中心に描かれたフランス・バニング・コック隊長と隣の
ウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長は、こっそり多めに
払っていた)

肖像画と言えば、普通は写真っぽく、正面をむいて無表情なものが多いが、
本作は構図に凝り、ポージングに凝り、配置に凝っている。
そして後年着けられてしまった名前『夜警』が加わることで、
今から、彼ら勇敢なる市民隊が市民の安全のために夜間警邏に向かおうとしている、
そんなドラマが浮かび上がる。彼ら市民一人ひとりに物語があるように見えてしまう。

当時すでに富と名声を手に入れていた光と影の画家・レンブラント。
そんな彼がどうしてこのような、斬新な構図の集団肖像画を描いたのか。

1.挑戦。「俺は集団肖像画をこんな構図で描きたいんだ!」という野心。
2.プライド。「このレンブラント様が、庶民ごときに依頼された仕事なんぞ、
  そうほいほいと出来るか!」という傲慢。

1でも2でも、発表後の世間の評判を見れば理由がつく。
「絵画的」と称賛される一方で、クライアントの意に反したとして批判もされた。
後年の没落ぶりから言って後者が強かったようにも思えるが、なんともいえない。

そう考えると1と2、双方を複雑な心境で内包していたのかもしれない。
そう考えなければ現在も名画・傑作として残らなかったのではないか。
アムステルダム国立美術館にも展示されなかったのではないか。


<関連作>
Kadokawa Art Selection  レンブラント  光と影のリアリティ
熊澤 弘
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-02-25)
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by 3G_gi_gei_go | 2017-02-22 00:00 | 作品紹介(その他)

様々なジャンルの群像劇作品を紹介します。不定期更新中。


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