2020年 08月 14日
国銅(小説)
作品名:国銅
著者:帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)
発行:2006年(文庫版)
あらすじ:
著者:帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)
発行:2006年(文庫版)
あらすじ:
歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン。
前後巻のうち前巻を7年ぐらいまえに読んでそのままにしておいた。
昨今の情勢で読む時間ができたので先月(7月)後巻を読み出して一か月ほどで読了。
かなり時間を空けたにも関わらず、前巻をおさらいで読むことはしなかった。
前巻の内容を結構おぼえていたためだ。それほど話の内容が印象的でドラマチックなのだ。
舞台は奈良時代。今の山口県の山奥で、銅精製の小作人として暮らす主人公たちが、
平城京に巨大な大仏(=奈良の大仏)を建造するストーリー。
里をでて、都で大仏を作り、そして里へ帰るまでの一部始終が前後巻の圧倒的ボリュームで書かれている。
とにかく暖かい作品。
もともと苦しい生活をしていた小作人が都会にでることでどのような仕打ちを受けるかとハラハラしたが、
主人公と出会う人々はだれもかれも暖かい人々なのだ。
それが日々の都の仕事(大仏作り)の大変辛い描写の救いとなっている。
主人公の国人が良い子なんだ、これが。
一生山奥の土地で過ごすと思っていた小作人たちが、突然都に連れていかれて生活を始める。
都になじむ者もいればなじまない者もいるが、小作人たちが自分らの生き方を決めることができない。
そんな状況のなかでも本作中の人々は、日々の楽しみを見つけて力強く生きている。まるでサラリーマンのように。
仕事と余暇を描いた、現代にも通じた環境を描く本作。
本の中にどっぷりトリップしたい人におすすめです。
<関連作>
帚木蓬生氏はコンスタントに作品を出している職人的な作家。
作中や解説などでにじみ出る印象は「日々の仕事をこつこつやる」ということ。
昨今のコロナの情勢でよく聞かれる「やるべきことをやる」を実践している作家といえる。
その読後感は圧倒的だった。
とにかくグイグイと引き込まれる。
歴史作家というより純粋なエンタメ作家の印象。
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by 3G_gi_gei_go
| 2020-08-14 16:27
| 作品紹介(小説)