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群像劇パーティ!

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国銅(小説)





作品名:国銅
著者:帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)
発行:2006年(文庫版)
あらすじ:
 歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン。


前後巻のうち前巻を7年ぐらいまえに読んでそのままにしておいた。
昨今の情勢で読む時間ができたので先月(7月)後巻を読み出して一か月ほどで読了。

かなり時間を空けたにも関わらず、前巻をおさらいで読むことはしなかった。
前巻の内容を結構おぼえていたためだ。それほど話の内容が印象的でドラマチックなのだ。

舞台は奈良時代。今の山口県の山奥で、銅精製の小作人として暮らす主人公たちが、
平城京に巨大な大仏(=奈良の大仏)を建造するストーリー。
里をでて、都で大仏を作り、そして里へ帰るまでの一部始終が前後巻の圧倒的ボリュームで書かれている。

とにかく暖かい作品。
もともと苦しい生活をしていた小作人が都会にでることでどのような仕打ちを受けるかとハラハラしたが、
主人公と出会う人々はだれもかれも暖かい人々なのだ。
それが日々の都の仕事(大仏作り)の大変辛い描写の救いとなっている。
主人公の国人が良い子なんだ、これが

一生山奥の土地で過ごすと思っていた小作人たちが、突然都に連れていかれて生活を始める。
都になじむ者もいればなじまない者もいるが、小作人たちが自分らの生き方を決めることができない。
そんな状況のなかでも本作中の人々は、日々の楽しみを見つけて力強く生きている。まるでサラリーマンのように。

仕事と余暇を描いた、現代にも通じた環境を描く本作。
本の中にどっぷりトリップしたい人におすすめです。


<関連作>
帚木蓬生氏はコンスタントに作品を出している職人的な作家。
作中や解説などでにじみ出る印象は「日々の仕事をこつこつやる」ということ。
昨今のコロナの情勢でよく聞かれる「やるべきことをやる」を実践している作家といえる。



初めて読んだ帚木蓬生。ハードカバー版で分厚くて、半年ぐらい掛けて読んだ。
その読後感は圧倒的だった。


とにかくグイグイと引き込まれる。
歴史作家というより純粋なエンタメ作家の印象。


# by 3G_gi_gei_go | 2020-08-14 16:27 | 作品紹介(小説)
シュワルツェネッガー主義
てらさわホーク
洋泉社
売り上げランキング: 164,055

作品名:シュワルツェネッガー主義
著者:てらさわホーク
発行:
2018年(平成30年)
概要:
『コマンド―』『ターミネーター』だけじゃない!
オーストリアからボディビルダーとして世界の頂点に立ち、
ハリウッドで天下を取り、政治に進出、そこから転落。
それでもどっこい生きている!

誰もが魅了された最後の英雄(ラストヒーロー)、その人生のすべて!

(帯より)

これはもうジャケ買いである。
右手で自動小銃を構え、左手に小銃から延びる弾帯を握り
口端にハマキを咥えた角刈りのアーノルド・シュワルツェネッガーが
こちらを向いて白い歯を見せて笑っている。

帯にはこう書かれている。
『すごい肉体! すごい顔! すごい映画! 暴力と愛嬌!』
そしてタイトルが『シュワルツェネッガー主義』

これはもう近年まれにみるジャケ買いである。そして大正解である。

本作はアーノルド・シュワルツェネッガーの半生を
歴代の主演作品と共に紹介する伝記のようなものである。

この本で初めてシュワルツェネッガーがオーストリア生まれだと知った。
見た目ともに、ザ・アメリカン! な感じがしていたのだが、
確かに「シュワルツェネッガー」という苗字は欧州っぽいのかも。

てらさわホーク氏のあふれるほどのシュワちゃん愛が詰め込まれており
シュワルツェネッガーの映画を全てを観た野郎も、少ししか観たことがない人も
これから観るトーシロも、存分に楽しめる本となっている。


<関連作>

コマンドー<ディレクターズ・カット> (吹替版)
(2015-04-24)
売り上げランキング: 20,423


シュワルツェネッガー人気・決定打の超名作。




# by 3G_gi_gei_go | 2019-01-14 21:19 | 作品紹介(小説)

残像(小説)

逆行の夏──ジョン・ヴァーリイ傑作選 (ハヤカワ文庫SF)
早川書房 (2015-09-09)
売り上げランキング: 93,332

作品名:残像
著者:ジョン・ヴァーリィ(翻訳:内田昌之)
発行:(原作)1978年(翻訳)1980年
あらすじ:
 世界恐慌から逃れるように西海岸を目指し、
 日本へ密航しようと考えたわたしは、
 道中、視聴覚障害者たちの暮らすコミューンに滞在する。


私は上記「逆行の夏」に収録された作品「残像」を読了した。
読了した瞬間「これはすごい作品だ」と口から飛び出した。

とにかく感動した。自分でも意外なほどに。(感動=泣いた)でなく(感情が動いた)だ。
いきなり今まで読んだ小説のフェイバリット10(いや、5!)に入りこんできた。
 
「すごい」とか「感動した」という曖昧な言葉だけで
具体的に「なにがどうすごいのか」とか「どこがどう感動したのか」を知りたいと思うが、
どうも説明できない。とにかくすごい。

これは「自分の好きな音楽がどう好きなのか」を説明することに似ているかもしれない。
音楽を好きになるのに理屈から入る人は稀だろうから。

そういうことで委細の説明はしない。これが本作に対する正しい説明かもしれない。
なぜなら本作は文字や言葉以外の言語を、文字や言葉で表現している作品だからだ。

エビデンスと説明責任とSNSが跋扈する昨今。
文字や言葉の緊張感が益々張り詰めているように感じる近年。
本作を読んで、文字や言葉が本来持っていた無限に広がる自由な世界を堪能してほしい。

だめだ(いつもながら)あたまごちゃごちゃだあ。


<関連作>
バービーはなぜ殺される (創元SF文庫)
ジョン ヴァーリイ
東京創元社
売り上げランキング: 550,348

『バービーはなぜ殺される』はゴリゴリのSFエンタメで、
「逆行の夏」にも収録されている短編の推理小説。

 SNSによって迫りつつある意思統一時代に向けた
 一つの道しるべになりえるかもしれない。なーんて。

 だめだあたまごちゃごちゃだあ。



# by 3G_gi_gei_go | 2018-11-12 23:08 | 作品紹介(小説)
劇場版「フリクリ オルタナ」&「フリクリ プログレ」Blu-ray BOX(初回生産限定版)




作品名:フリクリ プログレ
発表:2018年・日本
スタッフ:
 監督:荒井和人 / 海谷敏久 / 小川優樹 / 井端義秀 / 末澤慧 / 博史池畠
 脚本:岩井秀人
 出演:林原めぐみ、沢城みゆき、水瀬いのり、福山 潤 ほか
あらすじ:
ありとあらゆる命題に明確な答えを用意せず、
生理的欲動の充足のみをシコシコ満喫しその日暮らすような説得力ゼロの青少年たち。

その中でなんてことない日常を過ごすヘッドフォンの少女ヒドミ。
彼女が轢かれた夜、クラスメイトの少年・井出の額から巨大ロボットが出現した!
ハル子から分裂したラハルとジンユと出会い、
〝特別なことなんてない日常〟が終わりを告げる―!!!!!

(以下ネタバレあり)

フリクリ プログレを観た。以下ネタバレ感想。
未視聴者は観ないでください。







監督が6人というのにまず驚き。各話各人が監督しているのだろう。
たぶん監督全員がフリクリファンに違いない。画面から放つ愛が強い気がした。
ストーリーのまとまりがなくなるのかな、とも思ったがちゃんと筋が通っていたのは脚本の功績だろう。

各話各人ということになると、まとまりを気にしつつも、各話の個性も欲しがってしまうのが
欲張りなところである。画風については第5話が顕著で、他は同じ画風ではあったが、それでも各話の随所に
「ああ、この監督はこの演出好きなんだろうなあ」と思わせる演出がところどころ出ていたのが良かった。

フリクリ オルタナ」がオルタナティブ(=代替、新しい)の名の通り、
無印とは別の世界を舞台にした(ような)作品だったのに対し、本作はまさにプログレッシブ(進歩、漸進)。
無印の続編であることを作中に明確に示していた。
(単純に音楽ジャンルの当て付けただけなのは無論ですけどね)

プログレッシブには「革新」の意味もあるが、革新的な内容、とまではいかない。
むしろ無印ファンが喜ぶ演出や引用・オマージュが多数あって、思わずニヤニヤしてしまった。

オルタナでは高校2年生(17歳)が主人公だったのに対しプログレは中学2年生。
どちらもモラトリアムであることは同じだが、無印の小学6年生に近づけたことで、雰囲気も無印に近いものがあった。
全体はめちゃくちゃな流れだが、細部の設定で話の筋をつなぐ作りとか。
(なぜ町中にモチをバラまく?? → ああ、鳥(アトモスク)を捕まえるためのモチ(トリモチ)ね、とか)

声優の演技も見事で、ハルコの声は、はじめはモノマネみたいな違和感があったがすぐに慣れた。
オリジナルの人から変えたのかは疑問があるけど。

総じると、面白かった。
オルタナ同様まとまった印象で(当然と言えば当然すぎるのだが)、無印の時の驚きは得られなかった。
あれから18年経っているのだから驚かせてくれることに期待はしない。斜に構えた中二のように冷静だ。

ただ一箇所だけ気になったのは、ヒドミの変身シーンに流れたカッコいいBGM。
「あー、ここは本当はピロウズの曲を使いたかったんだろうな」と思った。

なんだかピロウズで使える曲がCD一枚分に収まる分だけ、って制約が見え隠れしていたのも、
まとまった印象を覚えた理由の一つかも。
まあ全曲新録なのだからそれだけでも贅沢といえば贅沢なのだが。。。

とりあえずフリクリファンとしては満足だし、なんだかこの展開方法(同じ設定を使って別の場所を舞台にする)を使えば、
これからも続編が作れる気がしてならない。もうこうなったらTVアニメ化を希望するぜ!!!


<関連作>






あんまり関係ないけど個人的にJenny Kaoriさんのイラストは好きです。


# by 3G_gi_gei_go | 2018-09-30 16:32 | 作品紹介(映画)





作品名:フリクリ オルタナ
発表:2018年・日本
スタッフ:
 監督:上村泰
 脚本:岩井秀人
 出演:新谷真弓、美山加恋、
青山穣 ほか
あらすじ:
 嵐のごとく登場するハル子。その時カナの額にお花が生えた!
 煙を吐きながら街をぶっ潰すアイロン。
 毎日が、毎日毎日続いていくと思っていた・・・
 力を手に入れたカナはアイロンをぶっ飛ばせるのか!?
(以上、公式HPより)


(※ネタバレあり)
久しぶりに映画館で映画を観た。
それが18年前に観たOVA『フリクリ』の続編である『フリクリ オルタナ』。

当時はラジオで『the pillows』を知り、そのつながりで知った『フリクリ』を観た。
当時はよくわからず、それでもとにかく尖っていたの作品だと興奮したことを覚えている。
ピロウズの音楽もマッチしていた。

それから海外で絶大な人気になって『伝説的』となったフリクリ。
その続編が作られた。それが『フリクリ オルタナ』と『フリクリ プログレ』。
18年経ってファンが作り手側に回った証拠だろう。

まずは『フリクリ オルタナ』が9月7日~9月27日。
その後『フリクリ プログレ』が9月28日~10月18日。

以下『フリクリ オルタナ』の感想。
ネタバレです。

=====


おそらくこの作品は映画としてではなくOVAとして作ったものだろう。
しかしOVAでの発売なんて今じゃもうほとんど売れないのかもしれない。
だから全6話をぶっつづけで映画として放映したのだ。

たぶんターゲットは海外。日本の放送はついで、みたいなのかも、と考えてしまう。
しかし海外は日本で作った『フリクリ』の続編が見たいから、日本のスタッフが作った。

しかし本当に『フリクリ』の続編として観たかったのは本作だろうか。
OVAのFLCLの気持ちで観てしまうと、ちょっとした違和感を覚える。
これはもちろん、仕方のないことと言えばそうなのだが。

まず、ストーリーが結構メイン的に進む。
個人的見解だが前作は、シュールなギャグやど派手なアクションなどがメインで、
その隙間でストーリーを展開させていた感じだった。
(しかしシッカリと話は進むし、各キャラクターの心動もわかる)。

本作はストーリーがきちっとしていた。
話数が進むにつれて、前作っぽいノリになっていった感じがするが、
それでも型からはみ出ないで、分かりやすかった。

そして登場人物もキチっとして、分かりやすいアクションとリアクションを備えていた。
キャラクターを前作の男子小学生から女子高校生に変えたことで、
ある程度の分別が付く年齢となってしまったことで、キチっとしてしまったのだろうか。
前作に醸していたお洒落なエロさ・グロさ・ナンセンスさがすべて、薄まっていた気がした。

なぜ女子高生だったのか。
今や女子高生が『日本』のサブカルアイコンだからだろうか。
だとしたら主人公たちのキャラクター性は、現代の高校生の感覚にマッチしているのだろうか。
オッサンの自分からしても、少し前の古い感じがした。
(だって現役高校生が『DANDANだんく!』なんて知らんやろ。。。)
(オーマイコンブ!とかウルトラ忍法帖とかエルガイヤーとか知らんやろ。。。。。)

とにかく分かりやすかった。
だからフリクリっぽくないな、と感じた。

じゃあフリクリ『っぽさ』とはなんだろうか。

ハルハラハル子が出てくればフリクリ?
ピロウズの楽曲を使えばフリクリ?
ギターで殴れば? ベスパが出てくれば?
(そういえばメタ発言とかがなかったな)

個人的にはフリクリっぽさ って『意味がないこと』だと思う。
今までの出来事が全て終わっても、とくに何も変わらず平常に戻る。

だとしたら本作の終わり方はまさにフリクリ。
だとすると本作は、2018年だからこそ作ることができた、観ることできた今のフリクリなのだろう。
だって2000年のフリクリだって、あの時代だからこそ作られた、観られた作品なのだから。

もしかしたら本作は、前作を視聴していない人たちのための入門編だったのかもしれない。
だとしたら『プログレ』への期待が否が応でも高まります。



<関連作>
FLCL Blu-ray BOX
FLCL Blu-ray BOX
posted with amazlet at 18.09.09
キングレコード (2016-11-23)
売り上げランキング: 297



全然関係ないけど個人的にフリクリとマシマロは近いんだ。



# by 3G_gi_gei_go | 2018-09-09 23:40 | 作品紹介(映画)

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