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群像劇パーティ!

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予告された殺人の記録 (新潮文庫)
G. ガルシア=マルケス
新潮社
売り上げランキング: 10,006

作品名:予告された殺人の記録
著者:G・ガルシア=マルケス
訳:野谷文昭
発行:1983年(昭和58年)
あらすじ:
町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、
なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?
閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた、幻想とも見紛う殺人事件。
凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、
崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く
入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。


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ノーベル文学賞受賞者の群像劇。港のある小さな田舎町で起こった
惨忍な殺人事件について、被害者の友人でもあった「わたし」が
町人たちに話を聞きながら、事件の真相を知ろうとする。

説明も少なく(もしくは後回しで)登場するたくさんの人物たちは、
誰も彼も、自分たちの立場・職業・身分をキッチリとこなしながら
当たり前の『ケ』の日々を過ごしている。そんな日々に稀に訪れた
素晴らしい『ハレ』の日によって、今回の事件が誘発された。

日常の隙間に入り込む非日常は、喜びか悲しみもしくはその両方を
引き起こす。それは非日常が入り込むまで分からない。

本作はミステリーではない。犯人は冒頭に説明されるし、犯行動機も
ストーリー中盤でしっかりとなされる。本作はこの事件前と事件後の、
人々の営みの変化、人間関係の変化を楽しむ作品であると感じた。

ラテンアメリカ文学独特の文体は、読む人の好みがはっきりと分かれるだろう。

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<関連作>
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)
ガブリエル ガルシア=マルケス
新潮社
売り上げランキング: 3,454

著者の代表作。
焼酎ではない。

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# by 3G_gi_gei_go | 2016-02-17 01:28 | 作品紹介(小説)

ホテル・ワルツ(映画)

ホテル・ワルツ [DVD]
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オンリー・ハーツ (2008-10-08)
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作品名:ホテル・ワルツ(原題:ワルツ)
発表:2007年・イタリア
スタッフ:
 監督:サルバトーレ・マイラ
 脚本:サルバトーレ・マイラ
 出演:バレリア・ソラリーノ、マリーナ・ロッコほか
あらすじ:
トリノのホテルで働く女アッスンタは今日が退職する最後の日だったが、
職場に出ると見知らぬ初老の男が彼女を待っていた。男は、以前ホテルで
働いていた自らの娘ルチアを探しにはるばるアルゼンチンからやってきた
のだ。アッスンタがルチアの代わりに男に出していた手紙に隠された秘密
とは。そして次第に真実が暴かれていく…。
(以上、Amazonより)
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全編ワンカットでお送りする野心的な作りのホテル型群像劇。
途中、回想シーンも織り交ぜているが、そこはカメラワークの
切り替えで自然に仕上げているのも分かりやすい。

メインのストーリーはホテルの従業員・アッスンタであるが、
彼女がホテルを歩き回ることで、そのカメラフレーム内に
ほかの従業員やホテルの客が映りこみ、カメラはそちらを追
い始める。そして別のストーリーが進むという、ありそうで
なかった面白い作りをしている。

なかにはまったくストーリーを追わない人物もいる。しかし
都度都度フレームの端っこに映りこむことで、彼・彼女らの
物語をほんのりと感じることができるのも面白い。

長さも90分と短い。落ち着いた作品だ。

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<関連作>
ショパン:ワルツ集(全14曲)
ルービンシュタイン(アルトゥール)
SMJ (2012-12-05)
売り上げランキング: 1,334


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# by 3G_gi_gei_go | 2016-02-10 01:39 | 作品紹介(映画)

悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)
木下 半太
幻冬舎
売り上げランキング: 275,673

作品名:悪夢のエレベータ
著者:木下半太
発行:2009年(平成21年)
あらすじ:
後頭部の強烈な痛みで目を覚ますと、緊急停止したエレ
ベータに、ヤクザ、オカマ、自殺願望の女と閉じ込めら
れていた。浮気相手の部屋から出てきたばかりなのに
大ピンチ!? しかも、三人には犯罪歴があることまで
発覚。精神的に追いつめられた密室で、ついに事件が
起こる。意外な黒幕は誰た? 笑いと恐怖に満ちた傑
作コメディサスペンス。

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目を覚ますとそこは停止したエレベータのなかだった。
乗り合わせた4人は脱出しようといろいろ試みるが……

という感じのサスペンス。『悪夢の……』とあるが、
ホラー・スリラー要素は無い〈もしくは薄い)。4人
それぞれの視点で、章立てて描かれており、最後には
事の結末が全て明らかになる、という安定のワクワク
エンタメ小説だ。

キャラクター性の強い登場人物たちはよく動く。そして
よく喋る。作者は劇団を率いているようなので、脚本的
な描き方になるのだろうか。舞台をイメージして読むと、
なるほどしっくり来る。

全体文量は比較的短いため、さくっと読めて楽しめる作品だ。

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<関連作>
D町怪奇物語 (幻冬舎文庫)
木下 半太
幻冬舎 (2015-10-08)
売り上げランキング: 70,472

作者の最新刊。

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# by 3G_gi_gei_go | 2016-01-27 00:41 | 作品紹介(小説)

マグノリア(映画)

マグノリア [DVD]
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ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2014-12-17)
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作品名:マグノリア
発表:1999年・アメリカ
スタッフ:
 監督:ポール・T・アンダーソン
 脚本:ポール・T・アンダーソン
 出演:トム・クルーズ、ウィリアム・メイシー、ジェイソン・ロバーツほか
あらすじ:
ロサンゼルスを舞台に、一見関係のない男女9人の24時間を描く群像劇。
(以上、Amazonより)

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本作は純粋な、完璧に純粋な群像劇。
各エピーソードはそれぞれ引っ付いたり離れたりするが、
全て集約することはない。

ストーリーを追うのも面白さの一つだが、本作は登場人物の
キャラクターの強さが最大の魅力。それが話を引っ張ってくれる。

中でも眼を見張るのはトム・クルーズ(声:山寺宏一)と
ウィリアム・メイシー(声:田原アルノ)の演技だろう。
俳優の演技もさることながら、吹き替えの声優の演技も
すごく良かった。

特にウィリアム・メイシー演じる元天才クイズ少年の役どころ。
なんだろう、単なる中年が酒場で酔っ払って周りに迷惑を
掛けているだけ(ではない)の演技なのだが、なんというか
哀愁が、これでもかと漂っていた。恰好悪いのに格好いい。
役者さんと吹き替えの声も、これでもかと言うくらいマッチ
していたのもよかった。

言葉で表せられない。とにかくよかった。本当によかった。

ストーリーを追うよりも、キャラクターを楽しむように観賞
してみると良いです。

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<関連作>
ブギーナイツ [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2011-04-21)
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本作の監督を有名にした作品。未視聴です。
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# by 3G_gi_gei_go | 2016-01-20 12:16 | 作品紹介(映画)

寝ずの番(映画)

寝ずの番 [DVD]
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角川ヘラルド映画 (2006-10-18)
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作品名:寝ずの番
発表:2006年・日本
スタッフ:
 監督:マキノ雅彦
 脚本:大森寿美男
 出演:中井貴一、長門裕之、岸辺一徳、笹野高史、木村佳乃ほか
あらすじ:
バチが当たるほど面白い!
上方落語の一門で師匠、一番弟子、おかみさんが次々と亡くなり、
それぞれのお通夜の席で“寝ずの番”をする弟子や故人ゆかりの
温かい仲間たちが、悲喜こもごもの思い出話に花を咲かせる人情物語だ。

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普通の一般庶民が人生で最も注目を浴びる日は
「結婚式」と「葬式」であるとされる。結婚式は分かるが
葬式は、本人が死んでいるため「人生で」とはならない。
それだったら「生まれた瞬間」の方が(物心はないが)
まだ「人生で」感がある。

それはさておき本作は、人生最後の晴れ舞台(?)
であるお葬式の中でも、お通夜の最後に朝まで
起きるシキタリである「寝ずの番」中に、故人の
様々な思い出話を繰り広げる。

感謝話もあれば恨み節もあるだろう。故人と話者のみ
しか知らない話なども飛び出して、初めて知った、と
なるのも寝ずの番の乙なところである。例えとして
あまり良くないが、故人が、数々のエピーソードの
マクガフィンとなっている、と言えなくもない。

しかし本作のエピーソード。そのほぼ全てが猥談だ。
しかも極めてストレートな隠語が飛び交うエロ話である。

卑猥な言葉・話を好まない人には合わない。
家族で見るのも、子供に見せるのもよろしくないだろう。
粋と洒落を好む大人の男にはぴったりの作品。

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<関連作>
寝ずの番 角川文庫
寝ずの番 角川文庫
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KADOKAWA / 角川書店 (2012-10-01)
売り上げランキング: 26,880

中島らも原作の小説。

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# by 3G_gi_gei_go | 2016-01-13 00:50 | 作品紹介(映画)

様々なジャンルの群像劇作品を紹介します。不定期更新中。


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