群像劇パーティ!

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作品名:渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない ~ひみつの片思い~
著者:
夜野せせり
絵:
森乃なっぱ
発行:2017年
(平成29年)11月24日
あらすじ:
鳴沢千歌、小学5年生の漫画好きの地味女子。なんと、パパの再婚相手の息子が、
学校1のモテ男子・渚くん……。反発する千歌だけど、いっしょに暮らしはじめて、
近すぎる距離の渚くんに、ときめいちゃって……? ドキドキ初恋ストーリー!



作品名:
渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない ~ありえない告白~
発行:2018年(平成30年)3月23日
あらすじ:
学校1のモテ男子・渚くんと、きょうだいになってしまったまんが好きの地味女子・千歌。
イジワルだったりやさしかったりする渚くんに、毎日ドキドキしっぱなし!
ある日千歌は、まんがクラブの先輩にワケアリの告白をされて…!?
絶好調第2弾!


本作はいわゆる「グッドモーニングコール」系である。
もっと古手で言えば「ママレードボーイ」系ともいえるかもしれない。
そう考えれば集英社の得意ジャンルかも。

さておき本作は集英社みらい文庫から刊行されている小学生向け小説。
読者対象は小学中級(なんだ中級って)で、ライトノベルよりも対象年齢は低いようだ。

物語は影の薄い女の子が、クラス一人気者の男の子と一緒に暮らすという王道の足バタバタ案件。
「秘密の共有」はいつの時代も親密の第一条件である。

そんな本作の魅力はなんといっても文章力である。これほどの文章を書ける人はなかなかいない。
それは小学生向けに優しく書かれている、という意味での文章力ではない。
簡潔な文字数で的確な情報量を過不足なく表現している。
主人公の感情、風景描写、各キャラクターのセリフやしぐさ。
(余談だけど「これ、メイプルシュガーの?」というセリフは素晴らしいね)
すべてを文字という同じサイズのブロックを並べて表現しなければならない小説という作法で、
本作は見事な言葉の取捨選択が行われている。読みやすく分かりやすく、あっさりもせずくどくもない。
ストーリー展開も起伏に富んで飽きさせず、全体を貫く主人公の成長も感動十分だ。
(キーホルダーがキーとなり、最後にダブルミーニングの材料になる展開はしびれました)

物語同様、文章も「王道」な本作。
ぜひとも万人に読んでほしい作品。

=======================================
好きすぎて考察をこじらせると、第1巻32Pにある、
ちなみに、あたしもメグも、少女まんが風きらきらお目目。ばっちり美化されてるのだ。
という文章をうがって読んでしまうことで、本作の読み方がギョッと変化してしまう。
つまり本作に描かれているきらきらお目目の主人公は、主人公の妄想であって、
実際の主人公たちはまったく違った風貌なのではないか、という「水槽の脳」的解釈(ちょっと違うね)
が出来てしまうのである。。どうでもいいことですが。。。

<関連作>
らんま1/2〔新装版〕(1) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2013-06-14)
売り上げランキング: 13,091

同居モノ。。。ちょっと違うね。




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by 3G_gi_gei_go | 2018-04-11 21:02 | 作品紹介(小説) | Comments(0)
テレビの黄金時代
テレビの黄金時代
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小林 信彦
文藝春秋
売り上げランキング: 643,621

作品名:テレビの黄金時代
著者:小林信彦
発行:2005年(平成17年)
内容紹介:
「夢であいましょう」「シャボン玉ホリデー」がはじまった1961年から10年余り、
娯楽の王様としてテレビは黄金時代を迎えた。渥美清、クレイジー・キャッツ、坂本九、
青島幸男、前田武彦、コント55号らが人気を博し、上り坂のメディアの作り手たちは
若くて熱かった――その舞台裏をいきいきと描くメディア現代史!


本作は小説ではなく、ノンフィクションルポ『のようなもの』である。
1953年に始まったテレビ放送。それが最も元気だったいわゆる
『黄金時代』を1962年~1972・3年として、その間に放送された
番組と、関わったスタッフ・キャストのエピソードが時系列に記されている。
時に当事者として関わり、時に遠くから分析眼を向けていた著者の視点から
書かれている。
つまり群像劇ではない。
が、誰しもが一度は顔を見たことのある著名・有名人のが次々に登場する
エピソードはまさにリアル群像劇といえ、ミーハー心をワクワクしてくれる。

・黒柳徹子に顔面パイを受ける著者(しかもNHKの番組で!)
・青山幸雄を『ルーサ(猿)』と面と向かって罵倒する大橋巨泉
・坂本九のバラエティの裏は高視聴率番組の「おそ松くん」
・クレイジー・キャッツの看板・植木等と天才・谷啓。そしてハナ肇
・手違いで作られたセットを見て15分でコントを作り上げた加藤茶

(しかしこれもあと10年(2020年代ぐらい)もしたら、誰それ?
 となるのだろう。特徴の固まりである渥美清の顔すら知らない人たちが
 出てくるに違いない。もう出ているか)

昭和を彩ったテレビヒーローたちのエネルギッシュな熱量が
まざまざと伝わってくる。出てくる誰もがテレビの仕事に対して全力で
真剣にぶつかっているということ。
高度経済成長期という『世間の雰囲気』も関係しているだろうが、
『仕事=人生』という感覚は、オンとオフを上手に切り替えられる
今の時代の勤め人にはピンとこないだろう。

それはサラリーマンがまだ職人だった最後の時代と言えるのだろうか。

上に「高度経済成長期という『世間の雰囲気』」と書いたが、それは
勝手に湧いて出てきたわけでなく、職人的サラリーマンたちの頑張りに
よって作られたのかもしれない。

あの頃は良かった、というノスタルジーに浸るというよりかは
単純な物語として十分面白い本作。
より楽しむには以下に紹介する他の小林信彦史を読むことをお勧めする
<関連作>
日本の喜劇人 (新潮文庫)
小林 信彦
新潮社
売り上げランキング: 42,993




植木等・藤山寛美・伊東四朗について書かれた批評本。


夢の砦
夢の砦
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小林 信彦
新潮社
売り上げランキング: 156,859


『夢の砦』は小説。分厚い二段組みのハードカバーで読み応え抜群。



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by 3G_gi_gei_go | 2018-01-28 23:25 | 作品紹介(その他) | Comments(0)
時の止まった赤ん坊
時の止まった赤ん坊
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曽野 綾子
海竜社
売り上げランキング: 698,491

作品名:時の止まった赤ん坊
著者:曾野綾子
発行:1984年(新装版2014年)
あらすじ:
マダガスカルにある、キリスト教の産院で働く日本人シスターの物語。

信心深くない私だが、それでも「導き」を感じることがある。

本書との出会いは図書館である。
夏休みを利用してガッツリした小説が読みたいなと思っていた時分、
目に入った分厚い本書(新装版)を棚から引き抜き、ページをめくる。
それは何でもないように見えて、やはり入江茜にとっては、いつみても奇妙な光景だった。
紗をなびかせたような激しい驟雨の中で、もの干しのロープに干された二、三十枚のシーツが、取り込もうとする人もないままに、滝のような雨に打たれている。
なんとも気になる・気に入る書き出しである。
そのままぐいぐいと物語のなかに吸い込まれていった。

異国の貧しい土地で働く日本人シスターが「教え」と「現実」のあいだで
葛藤しながら、修道女兼助産婦として暮らしていく日々が、淡々と描かれている。

生まれてくるから生まれてくる赤ん坊たちを、無事出産させるため、
常に最善を尽くすシスターたち。生まれることもあれば死産することもある。
五体満足でないこともある。生み出したあとも数日後に死んでしまうこともある。
それらすべてを本作は、淡々と、生活の流れとして書きつらねている。

人間の生と死が平等に、平坦に描かれる本作。久々に充実した読後感を得た。
読み終えた後、思わず本書を高らかに掲げた。意味はない。

細かいことだが文字の大きさもちょうどよかった。
本のサイズ、紙の厚み、フォントの大きさと行間が
ぴたりと合わさった木組み細工のような本。
こういう本に出合うのは一年一冊あるかないかだ。
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by 3G_gi_gei_go | 2017-08-26 12:05 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

ひかりごけ(小説)

ひかりごけ (新潮文庫)
武田 泰淳
新潮社
売り上げランキング: 32,812

作品名:ひかりごけ
著者:武田泰淳
発行:1954年(昭和29年)
あらすじ:
雪と氷に閉ざされた北海の洞窟の中で、生死の境に追い詰められた人
間同士が相食むにいたる惨劇を通して、極限状況における人間心理を
真正面から直視した問題作『ひかりごけ』。


本作の構成は独特極まりないものである。

前半は天然記念物の『ひかりごけ』を取材しにきた「私」に、
地元の中学校長がペキン岬の惨劇の話を『おかしくてたまらぬ風に』話す。
そしてこの惨劇を年若きS君が『小説的に』書いた郷土史の一項が記される。

後半は脚本風となる。括弧内のト書きと、人物名とセリフが最終ページまで
続くのである。内容は上記の惨劇の始終と、その後の裁判風景だ。
そして本作が最も、群像の輝き増したるは後半の脚本風小説場面である。

食人の罪で裁かれた唯一の生き残りである船長と、死んだ船員・八蔵と五助、
そして最後まで生きて生死の極限を見た少年・西川。彼ら四人がくりひろげる
遭難小屋での状況描写。そしてその後の裁判での、被告人・船長の描写。

脚本は映像的表現のための材料であるが、本作はあくまでも小説。
小説として、本作を核心部分を表現するため、後半の脚本風描写が功を奏している。

脚本は基本的にほとんどをセリフで表現される。ト書きで動きを示すが、
これらを十二分に表現発揮するのは役者の領分だ(と思っています)。

本作は脚本表現をもちいることで人物から、行為を分離させることに成功している。
船長の犯した食人の罪は、船長のキャラクターやバックボーンとはなんの関係もない。
これは舞台上で表現されたことだけが全てである演劇の、脚本表現によって見事に
表されている。

断罪されうる憎むべき行為が、しかし船長という登場人物に紐付かれずに、
ただそこにあっただけであり、それを私が読んだだけである、という心地よい
距離感のある読み方ができた。
キャラクターに肩入れしないで物語に没入することができるという、
満足する読後感を味わうことが出来た。

それだけで素晴らしい。


<関連作>
野火 (新潮文庫)
野火 (新潮文庫)
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大岡 昇平
新潮社
売り上げランキング: 9,022





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by 3G_gi_gei_go | 2017-02-15 00:00 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

悦ちゃん(小説)

悦ちゃん (ちくま文庫)
獅子 文六
筑摩書房
売り上げランキング: 26,062

作品名:悦ちゃん
著者:獅子文六
発行:1937年(昭和12年)
あらすじ:
悦ちゃんはお転婆でおませな10歳の女の子。ちょっぴり口が悪いのはご愛嬌、
歌がとても上手で、周りのみんなも目が離せない存在。早くに母親を亡くして、
のんびり屋の父親と二人で暮らしているが、そこへ突如、再婚話が持ち上がったから、
さあ大変。持ち前の行動力で東京中を奔走、周囲を巻き込みながら最後は驚きの事件が!
ユーモアと愛情に満ちた初期代表作。
(文庫・背表紙より)

昭和の流行作家・獅子文六の初の新聞小説。
昭和11年7月~昭和12年1月に報知新聞上で連載された。

悦ちゃんを中心にした大人たちの思惑が絡まり合い、
ストーリーはまったく予想にしない方向に進む。
次は一体どうなるのか気になり、ページをめくる手が止まらない。
特に後半の畳み込みはすさまじい。

少々トリッキーな展開もなくはないが、それもまた新聞小説の一興であろう。
リアルタイムに新聞で読んでいた人々は続きが気になって仕方がなかったに
違いない。テレビのない時代、新聞が娯楽も担っていた時代。
それほどに新聞小説は強いパワーを持ったコンテンツだったのだろう。

作中に描かれる戦前の東京。WW2手前の時代であるが、情景は鮮やかさと
エネルギーに満ちている。円タク、銀ブラ、昔ながらの江戸っ子などの
ノスタルジーな風俗はモチ出て来るが、ほかにも、セーラー服を着て
女学生コスプレをする20代前半のシャンな女性や、子役アイドルとして
歌手デビューする小学生など、昨今のサブカル界隈でよく見る展開が
約80年前にもすでに繰り広げられるのが面白い。
昔から変わっていないというか、昔からこういうのがお好きということだろうか。


<関連作>
娘と私 (ちくま文庫)
娘と私 (ちくま文庫)
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獅子 文六
筑摩書房
売り上げランキング: 262,401

連続テレビ小説第1作の原作。



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by 3G_gi_gei_go | 2017-02-08 00:00 | 作品紹介(小説) | Comments(0)
ぼくたちの好きな戦争 (新潮文庫)
小林 信彦
新潮社
売り上げランキング: 288,730

作品名:僕たちの好きな戦争
著者:小林信彦
発行:1986年(昭和61年)
あらすじ:
たのしい戦争、ゆかいな戦争、一度やったらやめられない―。
束の間の大勝利に酔い、大戦のノリを満喫する東京・下町の和菓子屋一家。
辞世の歌でギャグ合戦を展開する南の島の兵士たち。そしてアメリカ海軍の
少尉の手になる抱腹絶倒の近未来小説。めまぐるしく舞台を移しながら、
戦争は際限なく喜劇として描かれてゆく。あらゆる手法を駆使し、
笑いと仕掛けで構築したポップ戦争巨編。

(背表紙より)

私は小林信彦が大好きである。好きすぎて読み渋りするほどである。
というわけで本棚には〈わざと〉積読している氏の作品があと数冊ある。
そのなかで群像劇な作品は都度都度紹介する予定だ。

そんなわけで本作・僕たちの好きな戦争。
なんというか氏の文体をもってしても舞台の時間と、人物の視点が
目まぐるしく飛び回り、さらにはかなりのページを割いた作中作がぶちこまた結果、
全編を通した煩雑さをかもし、いささか混乱しながら読んだ。

しかしこの混乱こそ、戦時中の銃後の人々の暮らしそのものだったのだろうか。
空襲で家は焼かれ、家族や近所の人々はいなくなり、明日が今日の延長線上に
乗っていない日常を過ごす人々の心理状態。それこそ本作の全体に流れている。

なにかのエッセイで作者が、本作は難産だった旨を記していた。
それもまた心地よい混乱を来す読後感をかもす要因かもしれない。

(余談だが本作2冊買ってた)

<関連作>
2001年映画の旅―ぼくが選んだ20世紀洋画・邦画ベスト200
小林 信彦
文藝春秋
売り上げランキング: 832,108





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by 3G_gi_gei_go | 2017-01-25 00:26 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

感情8号線(小説)

感情8号線 (祥伝社文庫)
畑野 智美
祥伝社 (2017-01-12)
売り上げランキング: 180,870

作品名:感情8号線
著者:畑野智美
発行:2015年(平成27年)
あらすじ:
荻窪で暮らす劇団員の真希はバイト仲間に片思い中。彼には彼女がいるのに
思いを断ち切れない。八幡山で同棲中の絵梨は彼に暴力を振るわれているが、
今の生活を手放せない。二子玉川の高級マンションに住む専業主婦の芙美は
夫の不倫に苦しんでいる。同じ道沿いに暮らしているのに、恋愛も悩みも
人生もみんな違っていて……。幸せへ遠回りしてしまう女性たちの六つの物語。
(文庫・背表紙より)

2017年1月からの連続ドラマ化に合わせて文庫化したものを読了。

上記あらすじで説明完了しているが、一本の幹線道路をマクガフィンとして
6人の女性視点を各1話とした全6話の短編集。しかし登場人物はすべての話で
つながりをもっており、短編集というよりは章分けの長編と言った印象。

環状八号線の沿線のそれぞれの街。道一本でつながっているにも関わらず、
メインの移動手段である、電車で考えてしまうと実は遠い。
『近いのに遠い』それぞれの街。『まっすぐ行けずに遠回りしてしまう』それぞれの街。
本作ではその描写をそれぞれの話でくりかえし表現している。
それは地理的なものだけでない暗喩のようにも読めてくる。

性格の違う女性6人+脇役数名を、細かな所作表現・描写で
書き分ける筆致は見事。実際の地名や、人物の過去・背景もしっかりと
書かれているため、登場人物はどれも説得力を持って毎日を生きていると感じる。

いわゆるオーソドックスな群像劇。


<関連作>
運転、見合わせ中
運転、見合わせ中
posted with amazlet at 17.01.16
畑野 智美
実業之日本社
売り上げランキング: 386,529


海の見える街 (講談社文庫)
畑野 智美
講談社 (2015-09-15)
売り上げランキング: 63,122




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by 3G_gi_gei_go | 2017-01-18 00:00 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

カルテット!(小説)

カルテット! (河出文庫)
河出書房新社 (2016-07-01)
売り上げランキング: 181,084

作品名:カルテット!
著者:鬼塚 忠
発行:2010年(平成22年)
あらすじ:
「そこにぼくの音楽があるんです!」
バイオリニストとして将来を有望視されている中学生の開。
ところが家族はバラバラで崩壊寸前だった。ある時、家族で
カルテットを組んで観客を前に披露することに——。
家族の絆、音楽、そして淡い初恋……。心温まる涙と感動の
青春&家族物語。


名前の通り、四重奏(カルテット)を演奏する4人の群像劇。
普通のカルテットとちょっと違うのは、その4人が家族であること。

一姫二太郎の4人家族がカルテットを通して、お互いの気持ちを知り、
想いを発見し、絆を深めていく王道的物語。
主人公は二太郎の開だが、失業の父や、やさぐれ中の長姉、そして
母親と、随所に視点を切り替えて、各人のバックボーンを描くことで
話に深みを増している。

「心温まる」のうたい文句の通り、最後は王道的感動が待っている。
(その後の物語がちょっと心配な気もするが・・・)


<関連作>
カルテット!~Quartet!~ [DVD]
松竹 (2012-06-08)
売り上げランキング: 93,312

映画化もしたようですね。
「カルテット」って映画は複数ありますが、
剛力彩芽=今回の
袴田吉彦=久石譲監督
ってことで。




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by 3G_gi_gei_go | 2016-08-31 00:21 | 作品紹介(小説) | Comments(0)

極東セレナーデ(小説)

極東セレナーデ (小林信彦コレクション)
小林 信彦
フリースタイル
売り上げランキング: 321,012

作品名:極東セレナーデ
著者:小林信彦
発行:1987年(昭和62年)
あらすじ:
フツーの女の子が、いつの間にか<知的アイドル>になった。
CM、映画、LPと、もう大騒ぎ!! ところが、写真雑誌や、
怖い人たちが、このアイドルに目をつけて……。


80年代アイドルのサクセスストーリーと言ったところ。
物語のはじめはアイドルとして作られるフリーライター志望の
朝倉利奈(20)の視点だったのが、後半は完全に、それを
仕掛けたプロデューサーの氷川(45)視点に変わる。

本作の主人公はリナだが、彼女に関係する芸能関係者の面々の
それぞれの立場・心情をことこまかに説明する。
それは群像劇というより単純に、小林氏の書きたい筋のために
視点を飛ばしているだけのように感じる。視点のブレは喜ばしい
ものではないが、本作はもともと新聞小説である。新聞読者を
飽きさせないよう、毎日読んでもらうには、視点のブレとかは
細かいことなのだろう。きっとそうだろう。だって面白いから。

筆者の持ち味であるキャラクタたちの会話の応酬、時代分析、
そして都会(東京や神戸、そしてニューヨーク)の風景描写も、
リアルタイムで読んでいた読者を飽きさせないためには具合が良い。

上で紹介した新装版以外にも上下巻で文庫版なども出ている。


<関連作>

世間知らず
世間知らず
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小林 信彦
新潮社
売り上げランキング: 1,283,305

「背中あわせのハートブレイク」という名前でも出ている
小林信彦作品のなかでもお気に入りのひとつ。
いわゆる「学園もの」だが、舞台が終戦から2~3年の東京。
しかし全然暗くない。むしろユーモアたっぷりで、どんどん
読み進めることができる。




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by 3G_gi_gei_go | 2016-08-17 00:48 | 作品紹介(小説) | Comments(0)
Basilisk: Complete Series [Blu-ray]
Funimation
売り上げランキング: 11,773

作品名:バジリスク ~甲賀忍法帖~
発表:2003年(漫画)/2005年(アニメ)
スタッフ:
 原作:山田風太郎
 漫画:せがわまさき
 監督(アニメ):木崎文智
 出演(声優):島海浩輔、水樹奈々、速水奨、木村はるか ほか
あらすじ:

「二人手をたずさえて、両家を縛る宿怨の鎖を断ち切ろう」
四百年の永きにわたる甲賀と伊賀の宿怨を断ち切り、
共に生きることを誓い合う甲賀の弦之介と伊賀の朧。

しかし、愛し合う二人は、殺し合う運命にあった……

慶長十九年。齢七十三歳の家康は悩んでいた。
暗愚の兄・竹千代か、聡明な弟・国千代か?
混乱を極める徳川三代将軍の世継ぎ問題に決着をつけるため、
甲賀を国千代派、伊賀を竹千代として忍法の二大宗家を相争わせ、
それぞれの精鋭十人対十人の忍法殺戮合戦の結果、どちらか
生き残ったほうにそれを賭けるという厳命を下した。
先代服部半蔵との間に交わされた「不戦の約定」が解かれ、
手綱を解かれた猟犬のごとく、怨敵に挑んでゆく忍者達!
己の肉体こそが最大の武器!
人知を超えた秘術をもった、個性溢るる忍びの面々。
老若男女二十人二十色、超人奇人が相乱れ、
秘術の限りを尽くして繰り広げられる忍法争いがいま始まる!!


バジリスクは西洋の怪物の名。目を見ただけで死んでしまうという
化け物。なるほど、本作の名前にピタリをハマっている。

原作は大衆小説の雄たる山田風太郎が1958年(昭和33年)に
出した小説『甲賀忍法帖』を、せがわまさき氏が漫画化した作品。
せがわまさき氏はこれで、山田風太郎の漫画化といえばこの人、の
地位を確固たるものにした。

本作の魅力は、分かりやすくもワクワクする設定と、魅力的な登場人物
だろう。主人公らは骨太で二枚目に、異能の忍者たちは面妖で奇っ怪に、
そして女達は色っぽく・可愛く描かれている。
ややもすると、記号化しやすくなる異能キャラたちだが、そうならずに
人情味あふれる描写を見せてくれるのは、ロードムービーであることと、
山田風太郎のパワー、そしてせがわ氏の卓越した実力の賜物だろう。

いわゆるエンタメ系忍者の忍術合戦である。これが半世紀以上前に
誕生したのは驚く他にない。

漫画版・アニメ版それぞれ本筋は同じだが、アニメ版ではさらに、
一人ひとりが死ぬ理由をしっかりと深掘りして見せることで、死に
説得力をもたせようとしている。だがしかし、漫画版の深掘りもせず
結構あっさり死ぬ描写も「死」という現実を見せつけるのには効果的な
演出である。

さらに異能系にありがちな、ピンチの時の奇跡的覚醒なんてものは
なく、キャラクターの行動やその能力が、パズルのように動いて、
なるべくしてなった方向に筋が進んでいくのも、物語の強度を強くしている。

復讐と愛慕の心をテーマに描かれた忍者活劇。
日本特有の勧善懲悪で語れないすばらしい作品だった。

<関連作>
甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)
山田 風太郎
講談社
売り上げランキング: 78,208

「異能者のチームバトル」の始祖。
日本のコンテンツ界の至宝であろう。
パイオニアは古びない。

甲賀忍法帖
甲賀忍法帖
posted with amazlet at 16.07.26
陰陽座
キングレコード (2005-04-27)
売り上げランキング: 1,800

ついでに主題歌も。
タイトルそのまま「甲賀忍法帖」。

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by 3G_gi_gei_go | 2016-08-10 00:40 | 作品紹介(その他) | Comments(0)

様々なジャンルの群像劇作品を紹介します。更新完了。


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